鍼灸治療は古くから産前産後の母子を守るために行われてきました。有名なのが妊婦への三陰交と至陰の灸です。三陰交は健康的な妊娠期間を過ごすのに、至陰は逆子の改善に使われてきました。ある患者さんは施術と同時にセルフケアでせんねん灸による三陰交の灸を行う事で高齢出産を無事終える事ができました。また逆子の患者さんはセルフケアでせんねん灸による至陰の灸をお伝えした事で改善した事もありました。
赤ちゃんが生まれてからは、お母さんの養生でも三陰交は使用できます。産後の養生はとても大切で、昔は目も使ってはいけないと言われていました。これは出産により大量の血を消耗してしまい、血を常時必要としている目に負荷をかけてはいけないという東洋医学の知恵から来ています。産後の肥立ちが悪いと、年齢を重ねてから症状が現れてきます。現代社会では難しいかもしれませんが、ぜひ産後はゆっくりと過ごす事をお勧めします。
赤ちゃんへの鍼灸治療は小児鍼というものがあり、刺さない鍼で皮膚をさする程度の刺激を与えます。それにより赤ちゃんがリラックスするという事で、主に疳の虫の治療で行われています。赤ちゃんへの治療も大事ですが、それ以上にお母さんが心身共に健康である事が何より大切です。お母さんの気持ちが不安定だと赤ちゃんも不安定になります。よく小児の治療では「子供よりまず母親を治療しなさい」という考え方もあるくらいです。ですから、ぜひお母さんの心身のやすらぎのために鍼灸治療や東洋医学の知恵を活用して下さい。子育てには対処療法的な考え方よりも、自然に則った東洋的な考え方が必要な場面が沢山あります。ぜひ鍼灸治療を受けながら、東洋の知恵を学ぶ機会を作ってみてください。子育てにきっと役に立つと思います。
(専任教員)三保翔平